第3回PIASセミナーを開催します
先端研究院(PIAS)では、先端研究院の最新研究成果を学内外に紹介し、愛媛大学内の共同研究や学外産学連携、自治体連携の契機作り、また、学外一般へのアウトリーチを目的とした、PIASセミナーを開催しています。
本セミナーは、研究者以外の方にも分かりやすく説明することを心がけています。どなたさまも、ぜひお気軽にご参加ください。
2025年8月1日(水) 16:00 – 16:30
ZOOMを用いたオンラインセミナー
学内の方:EU_BBSのご案内メールにログイン情報が記載されております。
学外の方:以下参加登録フォームよりお申し込みください。折り返しログイン方法をお知らせします。
参加登録フォーム
https://forms.office.com/r/3mWhJrB3rX
井上紗綾子 助教
地球深部ダイナミクス研究センター
昆虫の左右の羽の超微細構造は、それぞれ右巻きと左巻き
昆虫は左右で対になった翅をもち、その微細構造は昆虫翅の多機能性と関係して調べられてきました。しかし、左翅と右翅の微細構造の比較はあまりされてきませんでした。なぜなら、翅の微細構造はマイクロメートル(1mmの千分の一)スケールであり、高い空間分解能での解析が必要となるためです。
井上助教らの研究チームでは、モンスズメバチの左右後翅の微細構造を高い空間分解能をもつ電界放出型走査電子顕微鏡により観察し、翅表面を覆う長さ100µm(マイクロメートル)直径6µmの棘状の毛の表面に螺旋状の溝があることを明らかにしました。螺旋状の溝には左巻きと右巻きがあり、後翅の前縁部分では左翅では右巻き、右翅では左巻きの螺旋模様が卓越していることが明らかになりました。棘を構成するタンパク質の高次構造を、研究チームメンバーが開発した100µmの空間分解能を持つ顕微スキャン型多次元赤外円二色性分光装置にて解析したところ、左翅と右翅の棘はそれぞれ右手型と左手型のタンパク質高次構造をもつことが示されました。本研究の結果は昆虫の左右非対称性の形成がタンパク質高次構造により制御されていることを示唆しています。
本研究で行ったような高空間分解能での昆虫翅の左右非対称性の解析はこれまで行われてきませんでしたが、本研究の結果は、他の昆虫翅においても同様の関係が発見される可能性を示すもので、今後の検証により生物の形態の左右非対称性がどのように作られるのかが明らかになると期待されます。
本研究成果は、英国王立化学会の科学雑誌「Physical Chemistry Chemical Physics (PCCP)」に2025年6月13日に掲載されました。
愛媛大学 先端研究院 先端研究高度支援
E-mail: pias_adm -at- stu.ehime-u.ac.jp